星川レオの作品研究・紹介室

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機動戦士ガンダムF91

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 今回紹介するのは「機動戦士ガンダムF91」です。富野由悠季監督らが制作した、新たな宇宙世紀を描いた劇場版ガンダム作品。今年で公開35周年を迎えます。

 

 宇宙世紀0123年。「コスモ貴族主義」を唱え、「コスモ・バビロニア」建国を目指す「マイッツァー・ロナ」が創設した軍事組織「クロスボーン・バンガード」のモビルスーツ群が新興コロニー「フロンティアⅣ」への侵攻を開始しました。

 フロンティアⅣで暮らしていた高校生「シーブック・アノー」は友人の「セシリー・フェアチャイルド」たちと共に戦禍を逃れるため、スペースボートのある浅橋へと向かっていました。

 その最中、セシリーは耳鳴りに似た感覚を感じていました。

 浅橋に到着し、脱出の準備をしていたシーブックたちでしたが、セシリーは自分の養父である「シオ・フェアチャイルド」によって、クロスボーン・バンガードの士官であり、セシリーの兄でもある「ドレル・ロナ」に引き渡されてしまいます。

 十数年ぶりにロナ家に戻ったセシリーは本名である「ベラ・ロナ」として扱われ、そこで「鉄仮面」を名乗り、強化人間となった父「カロッゾ・ロナ」と祖父マイッツァーと再会。

 ベラを連れ戻した理由は彼女をコスモ・バビロニアを建国するための女王として迎え入れるためでした。

 一方、フロンティアⅣを脱出したシーブックたちは「フロンティアⅠ」に逃げ延び、近くに居合わせた地球連邦軍の練習艦「スペース・アーク」へ徴用され、連邦軍やレジスタンスと共にクロスボーン・バンガードと戦う事になってしまいます。

 そこでシーブックは新型モビルスーツ「ガンダムF91」に乗る事になります。

 

 F91は「シャアの反乱」以降、大きな戦乱もなく、30年経った後の宇宙世紀。地球連邦政府が時間と資源を怠惰に浪費していた時代の話です。

 本作は劇場で上映された通常版と完全版の二つがあります。F91はかなりハイテンポでお話が進んでいく作品なので、単純に描写が足されている完全版がおすすめです。

 一回目の視聴だと展開が早くてついて行くのが大変なのですが、映画一本という短い尺の中で耳に残りやすい富野節の数々や、かなりの情報量がこれでもか、と詰め込まれています。

 見る人を選ぶものの、F91は設定が凝っていて調べれば調べる程、奥の深い作りである事がわかるんですね。

 慣れや探求心さえ発揮されて噛み合えば、何度も楽しみを味わう事ができる作品となっています。筆者も年に1~2回はF91を見ています。

 F91は作中のビームの光の演出が独特のもので、戦場で命が散っていくという寂しさと、戦場で舞い散る閃光の美しさ、二つの相反するはずの要素が噛み合ってそこも惹かれる要素になっています。

 後、ガンダムF91は「あやとりの八掛けの桟橋」も作中重要になっていて、家族との繋がりも含まれているロマンチックな機体でもあるんですね。

 

 F91の時代に起こった技術革新。それはモビルスーツの小型化でした。

 ジェネレーターの小型化に成功し、高出力を生み出す事に成功した事で機体が小型化されて、飛躍的に性能が上がったんですね。

 当時はガンプラ的には小っちゃくなって手抜きだ!と言われていたのですが、自分たちが暮らす現実でもパソコンや携帯電話、ゲーム機などが技術が上がっていく毎にどんどん小型化していったので、F91は90年代の時点で時代を先取りしていた、という事になります。

 

 今作の重要な要素であるコスモ貴族主義とは地球連邦政府の絶対民主主義が長く続き過ぎた反動で現れた主義者たちの事です。

 マイッツァーが提唱するコスモ貴族主義とは「人類と世界を治めるのは自らの血を流す事を恐れない高貴な者が司るべきであり、またその義務を背負うべき」というもので社会階級制度の一つの形態とも言えるものでした。

 簡単に言うと、偉い奴は偉い、偉い奴の言う事を聞いていた方が人生わかりやすい。

 この世の中を治めるに相応しい能力を持った人間、貴族こそが一般人を導いていけるし、より良い社会の在り方を築けるはずだ、という考えの人たち、要するに先祖帰りを望んでいる人たちです。

 しかし、その貴族は中世の貴族だとか、何十代にも渡る血の伝統とかではなく、自分で「私は今日から貴族だ!」と言い出す訳ですね。

 そもそも、その何十代前のご先祖の貴族も結局は自分で言い出して貴族になった存在。

 その人が本当に偉いという保証はなく、社会の成り立ちとしては歪な部分がある主義なのです。

 中世の時代だったら、文明のレベルが低かったので貴族主義社会も立派な人々の生き方の一つですが、宇宙世紀で貴族主義を再びやろう、というのは無理がある話なんですね。

 現に「ザビーネ・シャル」というキャラが「シャル家」の名前を得た際、周りの他のクロスボーン・バンガードの兵士たちは「でっちあげの家名」だとか「何であいつが」みたいな嫉妬の描写があるんですね。

 もう組織内の時点で誰が先に貴族になるかの争いが起きていて、その貴族になった人物は貴族に相応しくない、と思う人たちが続出するという難点を最初から持ってしまっている訳です。

 そもそも、クロスボーン・バンガードは連邦に隠れながら軍を作る準備をしていたものの、それでも集まった人は少なかったので穴埋めに傭兵を雇っていて、全員が貴族主義者な訳じゃないんですね。

 マイッツァー自身も「わしは宇宙ゴミの回収やリサイクルをやってのけた偉大な人物なのだから、もっと評価されるべき」というのが本心なので軍の設立時点から将来性がない歪んだ組織でもある訳です。

 

 シーブック・アノーはフロンティア総合学園工業学科に通う高校生。

 シーブックは「見本」という意味の名付けになっていて、その名の通りガンダムの主人公のお手本となるような正義感の強い真面目な性格の少年として描かれています。また、高校生らしい年相応な危なっかしい所も持ち合わせていて、人間味も持ち合わせています。

 両親は離婚はしているのですが、それは仕事のためであって、仲違いした訳ではないので定期的に家族で一緒に食事をしています。

 それでもシーブックには仕事優先で家族を疎かにしている母には思う所があって、少しぎくしゃくしている所もあります。

 F91は最初は嫌がるセシリーを無理矢理コンテストに出場させようとする所から始まるのでそこからまず視聴者は混乱するんですね。

 これはシーブックが友達思いなのと先輩に対してムキになってしまったので、学園としては御法度であるトトカルチョを仲間たちでやる事になってしまったんですね。

 それで賭けの対象になっている事を伏せながらセシリーをコンテストに参加させました。それがセシリーにバレて怒っている訳です。

 

 セシリーはパン屋を経営する養父シオと共に暮らしている少女。フロンティア総合学園普通科に通っています。

 ロナ家である事を隠して暮らしているのですが、それでも持って生まれた才能というものは隠せず、日常生活でもカリスマ性を発揮してスクールでは人気者となっています。成績も優秀なのですが、美術だけは苦手。

 シーブックと初めて出会った際は「君はセシリー・フェアチャイルド?」と聞かれて、この人も人気者としての私が目当てで近寄って来たのか、と最初は思ってしまうのですが、その後シーブックは「ごめん、違ったかな?」と返答してきたのでそうじゃない事がわかりました。

 それがきっかけで「工業学科でもこんな子がいるんだ」となってシーブックに興味を持つようになります。

 セシリーのすごいところはロナ家にいきなり連れ帰らされて今後どうしたらいいかわからないはずなのに、人を導いていけるカリスマ性と、あるがままを見ただけでそのものの本質を洞察できるニュータイプ能力が噛み合って女王として振る舞えてしまうんですね。本人も作中で驚く程です。

 見た目が大人っぽくて、しっかりしてて計算高いようにも見え、冷たいようにも見えるというよく外見で誤解されてしまう子なのですが、本当は涙脆いナイーブな部分を持つ年相応の子なのです。

 

 「This is the only beginning.」

 語りたい事が多くて普段よりも長文になってしまいましたが、これでもまだまだ語り切れないところがあるのがF91の良いところ。気になった方は是非見てみて下さい。それでは!