

今回紹介するのは「機動戦士ガンダムF90」です。中原れい先生が描いた機動戦士ガンダムF91の前日譚に位置する作品です。
本編はこちら
時に宇宙世紀0120年。人類が宇宙に移り住んでから100年以上の時が流れ、数々の戦乱で投入された人型の機動兵器モビルスーツは、時代の移り変わりと共に大型化の一途を辿っていました。
機体性能の向上を図るための大型化ではありましたが、一方で運用コストの増加を招き、膨れ上がる軍事費は地球連邦政府の中で次第に深刻化していきます。
そして、軍の研究機関「サナリィ」は連邦政府の現況を受けてモビルスーツの小型化を提案。
性能を下げる事なく小型化した新たなるモビルスーツの開発計画「フォーミュラ計画」を発動します。
この計画で開発された「ガンダムF90」は連邦の次期主力モビルスーツとして正式採用され、ガンダムの名を持つ新たなモビルスーツがここに誕生しました。
かつての戦乱は過去のものとなり、人々が安息の時を過ごしていたこの時代。
新型ガンダムは戦いの幕開けを告げる使者なのでしょうか?
そして、宇宙世紀0120年10月25日。
謎のモビルスーツ部隊「オールズモビル」の襲撃を受け、ジュピトリス級輸送艦「コバヤシ丸」が撃沈。再び始まる戦いの狼煙が上がります。
時代を戦乱に引き込む古のモビルスーツたち。
平穏な時代は終わりを告げ、新たな戦いの物語が始まろうとしていました…。
今作は機動戦士ガンダムF91の三年前を描いた外伝作品。
軍人嫌いのテストパイロット「デフ・スタリオン」とその友人「シド」。そして、デフと良い感じの「ナヴィ」が宇宙空間で二機のガンダムF90のテスト運用をしていた際、オールズモビルに襲われて交戦。
結果、シドが乗ったガンダムF90 2号機がオールズモビルに奪われてしまいます。
それでデフたちが属する第13独立宇宙艦隊はオールズモビルがいるとされる火星へと行く事になり、奪われたF90の奪還とオールズモビルの掃討作戦を開始します。
オールズモビルたちが乗るモビルスーツは新型ではあるものの、見た目が「ザクII」「グフ」「リック・ドム」など一年戦争で活躍したモビルスーツたちなんですね。
まるでジオンの亡霊が現れたようで確証はありませんが、連邦上層部はオールズモビルはわざわざかつてのジオン軍のモビルスーツに似せるという拘りを持った敵という事でジオンの残党ではないか?と判断しました。
この戦いは新世代の小型モビルスーツVSリニューアルされた大型モビルスーツという構図になる訳です。
大型と小型のモビルスーツ同士の戦いというのは一見大型のモビルスーツの方が有利かのように見えますが、そこには新たな駆け引きが生まれました。
大型モビルスーツに乗っている人は小型モビルスーツを未だに20メートル級の機体としてコンピュータが認識してしまっていて、速さや重量を間違えて計算してしまい、結果的に攻撃が空振りしてしまったりするんですね。
これは逆も然りで、小型モビルスーツに乗っている人もコンピュータが大型モビルスーツを逆に小型だと認識してしまって、オートコントロールに任せてしまうと攻撃が当たりません。
F91本編でクロスボーン・バンガードの小型モビルスーツたちが大型モビルスーツのジェガンを次々と倒していっているのは単純に連邦パイロットの操縦技術の低下もありますが、ジェガンが相手を大型モビルスーツと同じだと認識してしまっている部分もあった訳です。
これは戦場ではかなり命取りになります。これからの宇宙世紀での戦いはオートコントロールに任せっきりにするのではなく、オートとマニュアルの使い分けが大事になって来るんですね。
今作は「大きさ」について描かれている作品で、他にも戦艦に軌道爆雷を当てて航行スケジュールにわずかなズレを起こさせ、火星から地球への帰還を不可能に陥らせたりと敵は巧妙な手口を使ったりもするんですね。
この事実に気がついたのはヒロインのナヴィで、宇宙空間に偶然あった軌道爆雷に当たる確率は1/256兆でそんな事はこの艦にスパイがいないとあり得ない、と判断するんですね。
SF考証がしっかりとしていて、敵も知的で、それに気づいたナヴィも頭が良くて好感が持てる、というなかなか真似できない高度な描写テクニックです。
ガンダムF90は戦闘用に大型化してしまったモビルスーツを用兵思想の原点に戻すために小型・高性能化をコンセプトに軍内部の研究機関サナリィが製造した試作実験機。
各所に配置したハードポイントによって、システム化された増加ユニットの換装をする事ができ、海・陸・空あらゆる戦局に対応した戦闘を可能としたガンダム。
今作では三つしか出ないのですが、換装パーツはアルファベットの数だけ存在します。
現在、「ガンダムF90ff」という別のガンダムF90を題材とした漫画が連載しており、もうF90の換装パーツはほとんど埋まっています。
F90はサナリィのご先祖的なモビルスーツで今作の後もクロスボーン・バンガードとの戦いや「鋼鉄の七人作戦」などで姿を確認でき、1号機と2号機、共に長らく活躍を見せる歴戦の機体となっています。
F90には疑似人格コンピュータ、1号機には「A・R」、2号機には「C・A」が積まれています。
A・Rはアムロ・レイ、C・Rはシャア・アズナブルがデータの元になっていて、それには個性があります。
ガンダムF90の開発にはファーストガンダムの登場人物である「ジョブ・ジョン」が関わっているため、このようにF90に疑似人格を搭載する事が可能となりました。
今作はF91の前日譚と紹介しましたが、逆襲のシャアの後日談の要素もあります。
アムロが地球に落ちるアクシズを押した際に見せてくれたサイコフレームの光。
その光を見て希望に満ち溢れた人もいれば、その光を悪いように捉えてしまった人もいました。
夕日を見たとして、それが綺麗だと思う人もいれば、逆に物悲しさを感じてしまう人もいるように。
アムロが見せてくれた光を歪んだ方向に捉えてしまったとある人物が今作の敵となっています。
「ねぇ、デフ。前からあなたの目、誰かに似てると思ったの…。今解ったの。確か…」。気になった方は是非読んでみて下さい。それでは!